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あまりに更新できないので、ブログに投下します。
ちょっとした小話です。
前半女子トークです。
後半まさかの激甘。








甘い香りを漂わせるキッチンは、男子禁制となっていた。
宿の女将さんのご厚意で、材料を持ち込み臨時ショコラティエとなっているのは、女子メンバー三人。
いかな旅路の途中とはいえ、女の子はどんな時でもイベントが好きなのである。
それがさらに、恋につながるイベントともなれば、たとえ本命がいようといまいと熱が入るのは予定調和。菓子業界の陰謀とわかっていても、乗ってしまうのが女子の性である。
メンバー構成員のうちの一人がカラミティシェフであるのが若干の不安要素(若干...?)ではあるのだが、失敗も見越して多めに材料は買ってある。問題はないだろう。

「やっぱりナタリアはアッシュにあげるんでしょー?」
「...も、もうアニスったら、からかわないでくださいまし!も、もちろん大佐にもガイにもルークにも差し上げますわ!」
つついたとたんにわかりやすい反応を返すナタリアに、アニスの目がチシャ猫のごとく細められる。大変、からかいがいのありそうな(否、有り余る)お姫様である。
とはいえ、頬を赤くしながらも、不器用ながらぷるぷるとチョコづくりにいそしむ彼女を応援する気持ちはもちろんあるので、アニスはとりあえずさっとナタリアの手にあった唐辛子パウダーを奪って棚に戻した。(一つ、命の危険が消えた)
「アニスはどなたに差し上げるんですの?」
直接直火にかけようとしたチョコを無言のティアに奪われ、さっと湯煎を差し出されたナタリアが、こてりと小首を傾げて問いかける。
とりあえず、アニスは先に、ナタリアの手元にあった味噌を遠ざけてからむぅ。と宙を見上げた。
「えー。やっぱお金持ち軍団の十倍返しは基本☆だしぃ。あとはイオン様と、パパかな」
背中に、コウモリの羽が見えなくも、ない。
リアル主義者の彼女にしてみれば、バレンタインなどはローリスクハイリターンの素敵イベントの一つなのだ。一ヶ月後を夢見て、鍛えた料理の腕だけお返しの物も跳ね上がろうというもの。
「んで、ティアは?」
ラスト一名、先ほどから無言で作業に没頭していたティアに水を向けるべく振り向いたアニスは、中途半端な表情で硬直する。
...うん、まぁ、正直予想できないことは無かったのだが。
そこにあったのは、三分の一スケールのチーグル。...いつのまに木型をそろえたのか。気になるところでは、ある。
「...ミュウ宛?」
分かり切った問いかけに、頬を赤らめたクールビューティは、だ、だめかしらと大変かわいらしい反応を返してくれた。
...余りにかわいらしいものだから、アニスは、「...共食い?」の一言を飲み込まざるを得ない。この場合、等身大でないのがせめてもの救いであろう。
冷やせばよいのでしたかしら。と氷を直接放り込みかけたナタリアの手からボウルを奪ってチョコレートをバットに流し込みながら、アニスはとりあえず三者三様のバレンタインにどこと無い疲労感を覚えたのであった。
(...しかし、くっついてるの二人に女性恐怖症一人ってのが、なんだかなぁ...)
ナタリアを除けば本命チョコは不在。
あまつさえ、自分たちのだれよりも純愛を貫く約一名(わかりにくくもう一名)がいるものだから、身近なターゲットの不在には乙女心にちょっぴりと不満を覚えるのであった。




(...?)
女子がなぜか固まって厨房に閉じこもってしまい、これ幸いとガイがのんびり趣味の譜業いじりに没頭し。
枕ですぴぴすぴぴと平和な寝息をたてるミュウを横目に、確かに暇ではあった。
そこに、出かけませんかとジェイドに誘われれば、正直なところ舞い上がるくらいうれしくて。
しかし連れて行かれた先の喫茶店で、彼に似合わぬ甘味...チョコケーキにチョコパフェのコンボをずずいと差し出されれば、何かあったかと首もかしげたくなろうものである。
(普段は、虫歯になるからと言って、ガイをはじめとした保護者たちにあまり甘いものを許可してもらえないのだ)
「どうぞ。お食べなさい」
進められてジェイドの手元をみれば、そこにはコーヒーのみ。
香りのよい紅茶までセットにつけられている自分とあわせると、なんだか無性に申し訳ない。
周りからみたら、犬耳がしょげている幻が見えるほどにしゅんとしてしまったルークに、ジェイドが珍しくあわてた声を出した。
「おや、嫌いでしたか?」
聞かれて、ぶんぶんとルークは首を横に振る。子供だと笑われるかもしれないが、実のところスイーツは大好きだ。
意志を伝えたことで、ジェイドの赤い瞳がほっとしたように和らいだ。
ああ、優しい色だなだなんて少し見とれていると、いつのまにか目の前にはフォークに刺さったケーキ。
「どうぞ?」
にんまり笑ったジェイドに、少しきょとんと首を傾げてから、ぱくりとケーキを口にした。
上品な甘さの、しっとりとしたチョコレートがおいしい。思わず相好を崩せば、ジェイドに伝わったのか、それはよかったです。と笑った。
(...!)
自分ばかりは申し訳ない。そう思ったルークは、名案とばかり、自分の目の前にあるスプーンにパフェをすくい取り、ジェイドの前に差し出す。
にっこりと笑ってみせれば、少し目を見開いた後に、ためらいもなくジェイドはそれを口にしてくれた。
「なかなかですね」
(おいしいよ)
後は、私はもう十分ですよ。というジェイドに甘えて、遠慮なく甘味を堪能する。
(...でも、なんでまたいきなり?)
別段、今日はルークの誕生日ではない。二人で出かける時もあるけれど、大抵は市場を見て回る程度だった。
疑問が顔に出ていたのだろうか。今日だけは特別ですと答えが返ってきて、ふぅん。と思っておく。とりあえず、今日は何か特別な日であることは理解できた。
(さんきゅ、な)
口を動かせば、いえいえ。どういたしまして。と応え。なんだか、甘いチョコレートと同じくらいジェイドが甘くて、溶けてしまいそうだ。
「たまには、ですよ」
ルークの口の端についたクリームをナプキンで拭ったジェイドに、顔を真っ赤にしながら、ルークは残りのケーキを口に押し込んだ。


遠回しな告白



おまけ


「...何か、あまったるーいって感じ」
「大佐もやりますわね。」
「いいなぁ...」
「ごしゅじんさ「はいはい、じゃましないの。先帰るよ、ミュウ」
「わたくしも、早くアッシュに渡したいですわ...」
「後でノエルにギンジさんと連絡とってもらおーよ」
「いいなぁ...」
「ティアー?ほら、帰るよー?」
「え?あ、待って!」







まさかの逆チョコ。そしてギャグ。
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